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TOP > コラム一覧 > はじめに〜予測原則〜
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愛犬にとって適切とは

まずは、これから紹介する治療の考え方をご理解いただくのと、自分の愛犬が病気になったときに、獣医師が、どのようなリスクと結果を選択しようとしているか、そして、獣医師の苦悩をご理解いただけるようになると思います。

治療にはかならず「リスク(危険)」がともないます。

手術においては失敗の危険がともないますし、薬は副作用があります。治癒を目指す行為をすることと、それにともなうリスク(危険)が生じることのなかで、獣医は、苦悩と共に、最善の治療をめざし診療の決断をしてゆきます。

そのなかで、医学を習得するものが最初に教えられるのが、「ヒポクラテスの誓い」という治療指針です。

ここでは、この考えをもとに、安全な治療指針の基本にできるだけ沿うように話をしてゆきたいと思います。

ここでの私の記事のスタンスも、そのような立場でまとめていきますので、最初にこのブログの立場(スタンス)をご理解いただければ幸いです。

獣医師がこのヒポクラテスの原則を超えた(すなわちリスクの高い)治療を選択した時は、言葉で説明するかしないかは別として、それだけ命の危険を感じている場合です。たとえば、犬の子宮蓄膿症という病気になった場合は放置すると命が助からないため、手術のリスクが高くても行う必要があるようなときです。


予防原則と安全原則とは

医学の父といわれるギリシャの医師「ヒポクラテス」が重視したことは、
「まず、患者を傷つけないこと」
ということです。

治療行為により傷つけることが少ない治療法を優先し、できだけ安全で効果的な治療法を目指すことの重要性を伝えています。これは、現代でも大切なことと考えます。


希望原則と個体差

身体は遺伝的多型(遺伝子が違う)です。

そのため、ある治療法に対して、効果のでるタイプ、でないタイプという差が起こります。これは近年、発展を遂げつつある遺伝子医療でもよく語られています。

たとえば、人に例えると、
アルコールオチョコ一杯も飲めない人もいれば、ボトル一本飲んでも平気な人がいるほど「個体差」があります。

牛乳を1Lパック一気飲みしても平気な人もいれば、コップ半分飲んだだけで下痢をしてしまう人もいます。

このように、ありふれた食品ですら個人的に大きな差が認められます。

人が多くの場合、アルコール(お酒)や牛乳を摂っても平気ですが、それに適合しない方には、大きな問題が起き、場合によっては命の危険まで生じる可能性をこのブログで、お話してゆきたいと思います。

人では、このような問題は周知されていますが、犬では検討が不十分な場合も多々あるように思うからです。

 


個々の犬の違いを考える

近年の犬の遺伝子解析では、西洋の犬より、アジアの犬のほうが遺伝子多型という報告があります。

洋犬に比べ、日本犬は同じ母親から生まれた子犬の性格の幅が大きいように思いますが、この犬の性格の多様性も、この遺伝子多型と関係しているといえるでしょう。

このように、個々の犬が遺伝的に幅があるため、大半で犬で効果はなくても、一部の個体には絶大な効果が確認できる場合があるということです。
反対に、大半の犬に対して良い健康法や治療法も、ある個体の犬は効かないケースや有害になる場合もあると思います。

このような個体差の遺伝的な大きな幅を考えると、有害でない限り効果の期待できる療法に対しては肯定的に見ていくという開かれた心が医療の姿勢として重要だと考えます。

それとは反対に、ある犬に奇跡的な効果があったからといって、その方法を、すべての犬に有効と判断するのは短略的すぎる思考と考えます。

同様に、多くの子に無害であっても、少数の子に有害性がでる場合もあり、その場合、統計で有害性が見落とされる場合もあります。

医学は科学ですので、その良否には「医学統計」を用います。
ところが、どの犬も遺伝的に同じであれば問題ないのですが、遺伝的な多様性があるために少数の個体に効果が発揮される療法は、統計的に有意としては検出されない場合があります。

このように、治療というのは、医学という科学をベースとしますが、統計データーに当てはまらないという部分が必然的に発生します。

※この漏れをなくして、個々により適切な治療を行おうというのが、遺伝子のタイプを診断して、治療するという遺伝子診断治療です。


健康や治療の見解が衝突するとき

医科学のベースを持たずに議論をすると泥沼になることがあります。
2つの違う意見で、議論がそもそもかみ合わないときは、意見を主張している人が、
@大多数の結果(標準偏差の中央)を基準で主張しているのか、
A両端の少数の切り捨てられる個体まで考慮に入れて主張しているのか、
という前提自体の間違いがよくあると思います。


医療家は病気の前に平等

どんな権威も、年齢も、「病気の前では」意味をなしません。

ただ、その病気を治せるかどうかだけが、治療家(専門家)として問われ、価値と評価を決めます。

その意味で、治療家は病気の前に平等です。

医療家は、有害を避けながら、一匹一匹の治療効果を高める方法を謙虚に探っていく(見つけていく)姿勢が重要なのだと思います。
また、人類が保有する獣医学が完全でない現状では、謙虚に学びつづける姿勢が重要だと感じます。
ただ、私のスタンスは、ヒポクラテスの誓いに準じて、できるだけ安全な視点で話しをすすめます。

<まとめ>
1.予防原則
ペットに危害を加える可能性のある療法(薬、食事など)を可能な限り控える
2.安全原則
ペットにできるだけ安全な治療法を選択する
3.希望原則
一般的な治療法でない方法でも、その子には効くことがある
(また、その逆で「想定外の原則」も考慮する必要性がある)
以上です。

(余談)
ヒポクラテスのもう一つの言葉を紹介いたします!!


食を薬とせよ!!

これは、まさしく、食事を治療のための薬とすることを良とした言葉です。安全で、やさしく、内側から治癒させようとする医療の心が語られた言葉です。

ただ、犬の場合は、人と異なり、解毒力のアセチル抱合代謝能がなく、グルクロン酸抱合する解毒能力も低いので、人に安全な野菜や薬でも注意を必要とする場合が多くあります。

ですが、実際に、深く食事や栄養を極めると、認知症が治ったり、寝たきりの子が立ち上がったりすることが多く見られるように思います。愛犬にとって、食を薬とするには、家族の愛情と知識が大切になります。

いろいろな人の記事を読まれるときも、全体の大多数(標準偏差の中央)での意見なのか、両端の意見まで含んだ意見なのか、判断しながら読んでいただくと役に立つことが多いと思います。

話しがかみ合わないときは、「中央値」対「想定外」 の意見であることが多いです。
これは、ワクチンなどの効果と副作用で議論となっていることが多いです。

簡単に言えば、
1.大多数に効果があり無害なので良いじゃないか!
という意見と、

2.一部の人に脳障害や身体障害が起きるので問題ではないか
という意見の違いです。

私は後者(2)の立場で記事を書くことが多いです。

それは、普通に健康でいられる子はそのままの生活で困らないからです。また、そういう子は、病気になってもかかりつけの病院の治療で治っているでしょう。現代の動物病院のレベルは高いです。
一般的なことをしていて問題が起き、解決できない子にも役立つような記事や情報まで含めて書きたいと思っています。

(⇒次の記事へつづく)


はじめに〜予測原則〜
医学の真実はどこに〜医学知識に関して〜
漢方東洋医学と西洋医学の違い
医学のゴールとは!?〜愛犬の寿命そして健康の満足地点〜
犬の完全栄養について〜ミーティング一風景〜


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